本「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(著:岸田奈美)★★★☆☆

期待とのギャップ:★★★☆☆
夢中になれる :★★☆☆☆
発見あり :★★★★☆
総合 :★★★☆☆ 

著者の自伝的エッセイ。
おかしみがあって、やさしさを感じて、ツイッターフォローしようと思った。

言葉の使い方がおもしろい。しょっぱなの「はじめに」から、小説を書いた経緯を
「下手の横好きが肥大化して、下手の縦横無尽好きのようになっただけだ」
とある。
”下手の横好き”と”縦横無尽”を組み合わせたか!と意外な言い回しだけど、表現したいことがありありと伝わってくる。
そんな言葉遊びがあちこちに。

そして物事を見る視線が優しくて、面白味を見出すスタンス。
中学のときに父親が急逝、高校の時に母親が倒れ車いす生活に、弟はダウン症でサポートが必要。
1つでも十分”大変”と思えるのに、悲観的にならない。悲観しても仕方ないから?悲観するヒマもなかったから?
母親や弟とのやり取りや日常の出来事の描写で、相手をまともに非難したり責めたりする描写がないから、気分良く読める。
そのシーンを比喩使って楽しくリアルに説明し、自分の気持ちを率直(にみえる)に文字に落とす。

そんなこと、強くないとできないですよね、と改めて思う。
父親が生きていて、母親は車いすでなく、弟がダウン症でない私の想像力には限界があるけど、この人強いな。
そうせざるを得なかった面もあるだろうけど、下半身不随になった母親に、生きる目的をもう1回持ってもらうために動き回るとか、強くて優しい。