本「掃除婦のための手引き書」(著:ルシア・ベルリン)★★★☆☆

予想とのギャップ:★★★★☆
夢中になれる  :★★☆☆☆
発見あり    :★★☆☆☆
総合      :★★★☆☆ 

表紙の写真がきれいな人で心惹かれ、その割に?タイトルのダサさは何だろうと気になった本。
ちょっと知ると時代の隔たりを感じるのもそのはず、著者はとっくに亡くなっていて、20世紀後半の話だった。
”掃除婦”なんていう言葉、意味は分かるけど、無理やり日本語に訳した感が否めない、という違和感で出足からつまずく。
読むと1回目は「これ面白いのか?」、2回目に「ああじっくり読むとじわじわと面白そう」と分かった。

まず、これは短編集。私は長く続く話を読むのが好きなので、数~数十ページですべての設定がガラッと変わるのはあちこち飛びすぎと思う。短編なのに?さらっと読んでは面白さが分かりづらい。1語1語ちゃんと読んで、情景を思い浮かべれば味わい深い。

内容は、著者の実生活を基にしたようで、タイトルの”掃除婦”から想像できる”貧しいシングルマザー”はこの本・彼女のごく一部しか表していない。ちょっともったいない。子供、高校生、親、アルコール中毒者、姉…さまざまな時代・立場の筆者が、アラスカ、チリ、テキサス、ニューヨーク、メキシコ…時々に生きた場所での出来事を描写する。
よく覚えてるもんだなと感心するくらい細かな具体的な記載で、立ち止まってよく読むとありありとその光景を想像できる。

そして客観的。見方によっては悲惨な境遇に見舞われてきたのに、つらいとか、大変とか、がんばったとか、読者に訴えない。これがいい・悪いの評価が入らない。他人の人生を語っているよう。

本そのものより著者本人に興味がわいた。