本「知られざる皇室外交」(著:西川恵)★★★★★

期待とのギャップ:★★★★★
夢中になれる :★★★★☆
発見あり :★★★★★
総合 :★★★★★

知られざる皇室外交 (角川新書)

知られざる皇室外交 (角川新書)

 

皇室の見方が変わる1冊。
外交において皇室が果たしている大きな役割を、全く知らなかった・わかってなかった。
皇居に向かって「ありがとうございます」と国民みんなで感謝しないといけないんでは?

オバマ大統領やトランプ大統領国賓として来日したときや、南の島に慰霊に行かれてるテレビニュースなどから、皇族が海外の要人をもてなしたり、外国に行ってることは知っていた。
知らなかったのはその意味合い。

憲法第1条「天皇は、日本国の象徴であり~」を学校で習ってから、”象徴”という分かったような分からないような言葉で存在を位置付けてきた。加えて、メディアの取り扱いに最大限の配慮が感じられる(テレビでは上品なナレーションとともに映像が流れ、コメントも賛美調)、パレードには人が集まって多くの人を惹きつける、そんな存在と何となく思っていた。
このところ平成から令和への代替わりで行事が続いて、メディアの露出も増えていたけれど、平時ならたまに外国要人の来日や外国訪問のニュースを見聞きするくらい。

もっと興味持ってもよかった。というか、持つべき。

日本の皇室ほど長い歴史と伝統を持つ王室はほとんどなく(バチカンくらいらしい)、海外から尊敬されていること、天皇はいくら権限がなくても国の代表としてみなされ、かつその地位は在籍期間が限定された首相より高いこと、個別具体的な外交問題の解決にかかわることはないけれど、相手国と日本の関係改善に努めてきたこと、いつだれがどこの国を訪問するかは、綿密な計画のもと決められていることなど、本当に知らなかったことがたくさん。

天皇が実は首相よりよっぽど影響力のある、日本の最上位の外交官だった、ということは、まあ明確には日本のメディアで説明できないから、新聞テレビに出てこないのでしょう。何ら国政に関する機能を持たない存在のはずだから、表立っての説明はしづらい。

残念というかもったいないのは、海外で認識されてるのに国内で外交に天皇が果たす役割をあまり認識されていないこと。
生まれつき職業が決まっていて、もしかしたらケーキ屋さんになりたかったかもしれないけど選択の自由はなく、最高レベルの教育を受けられるけれど仕事は超ハード。しかも高齢になってからが本番。美智子様は出産直後に注射打ちながら当時の皇太子夫婦の外国訪問の日程を乗り切ったとか。働き方改革とは無縁の世界と想像できる。

日本の地位・国益の向上に非常に大きな役割を果たされてるのに、それがお膝元の日本の中で知られてない。

皇室の存在ってよくわからないところがあったけど、とてもクリアになった。これからも伝統を守って、世襲を維持し、外国要人をもてなし、ここぞという国を訪問されるために必要な資金はきっちり税金を投入する価値がありそう。

本「夢をかなえるゾウ4 ガネーシャと死神」(著:水野敬也)★★★☆☆

期待とのギャップ:★★★☆☆
夢中になれる :★★★☆☆
発見あり :★★★☆☆
総合 :★★★☆☆

夢をかなえるゾウ4 ガネーシャと死神

夢をかなえるゾウ4 ガネーシャと死神

 

シリーズ第4弾。
以前1~3を読んだので気になって読むことにした。1~3の内容をほぼ忘れてしまったので、復習してから4つ目に手を出した方がよかったかもしれない。何かしらシリーズに一貫して著者が言いたいことがあると思うので。

今回は”死”を目前にした主人公を導いていくので、誰もが必ず死ぬという点において、普遍的な設定。それが次の瞬間なのか10年後なのか80年後なのかはともかく、死ぬことだけは間違いないから、”自分の事”としてとらえやすい。

登場する神様”ガネーシャ”のふざけた振る舞いが全然好きになれないけれど、所どころ刺さることを言うので、あなどれない。
今回ハッとさせられたのは、

①「『働く』の語源が『傍を楽にする』て言われるように、傍にいる人の苦労が分かって感謝できるようになれば、世の中の人らの苦労を減らせるサービスも生み出せるようになるんやで」(位置No.1974)
…まず、働くの語源に「傍を楽にする」があると知らなかった。同時に、ちょっと素敵だなと思った。
「そばにいる人を楽にする?」
会社の仕事ではピンとこない。会社から離れて家事や友人と行くレストランの予約をすること、などに”働く”を広げると、意味を当てはめやすい。
会社の仕事も、直接的に誰かを楽にするイメージがわかないけど、間接的にはあるかもしれない。自分1人の仕事でとらえず、大きく会社全体の仕事として見ると、絶対誰かの役に立っているはずだし、そうでなければ存続できない。
誰かを楽にするんだ、と思いながら会社の仕事をすると楽しい気持ちになれそう。

②「人を嫌ったり、人の行動にイライラしたりするちゅうんは、知らず知らずのうちに他人に完璧さを求めてもうてるちゅうことや。ただ、『ああ、今、自分は、相手が完璧じゃないことにイライラしてるな』て気づくことができれば、その感情と距離を置けるんやで」(位置No.3242)
…「何でこんなこともやってくれないのか」「普通はこうする」とか、他人の言動に感情を揺らされないようにするのが、平穏に生活する秘訣だと思ってるので、とても共感する。

本「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(著:岸田奈美)★★★☆☆

期待とのギャップ:★★★☆☆
夢中になれる :★★☆☆☆
発見あり :★★★★☆
総合 :★★★☆☆ 

著者の自伝的エッセイ。
おかしみがあって、やさしさを感じて、ツイッターフォローしようと思った。

言葉の使い方がおもしろい。しょっぱなの「はじめに」から、小説を書いた経緯を
「下手の横好きが肥大化して、下手の縦横無尽好きのようになっただけだ」
とある。
”下手の横好き”と”縦横無尽”を組み合わせたか!と意外な言い回しだけど、表現したいことがありありと伝わってくる。
そんな言葉遊びがあちこちに。

そして物事を見る視線が優しくて、面白味を見出すスタンス。
中学のときに父親が急逝、高校の時に母親が倒れ車いす生活に、弟はダウン症でサポートが必要。
1つでも十分”大変”と思えるのに、悲観的にならない。悲観しても仕方ないから?悲観するヒマもなかったから?
母親や弟とのやり取りや日常の出来事の描写で、相手をまともに非難したり責めたりする描写がないから、気分良く読める。
そのシーンを比喩使って楽しくリアルに説明し、自分の気持ちを率直(にみえる)に文字に落とす。

そんなこと、強くないとできないですよね、と改めて思う。
父親が生きていて、母親は車いすでなく、弟がダウン症でない私の想像力には限界があるけど、この人強いな。
そうせざるを得なかった面もあるだろうけど、下半身不随になった母親に、生きる目的をもう1回持ってもらうために動き回るとか、強くて優しい。

漫画「父よ、あなたは…」(著:沖田✕華)★★★☆☆

期待とのギャップ:★☆☆☆☆
夢中になれる :★★★★☆
発見あり :★★★☆☆
総合 :★★★☆☆

父よ、あなたは…

父よ、あなたは…

  • 作者:沖田 ×華
  • 発売日: 2020/10/16
  • メディア: 単行本
 

父親が亡くなったことをきっかけに起きた、お葬式→相続→親族とのごたごたを描いてある、しんみり+笑える漫画。

表紙の吹き出し「嫌い嫌い嫌い、超憎んでいる父が…まさか、こんな気持ちになるなんて!」から連想される著者の心境(嫌いで憎くくて絶縁状態の親でも、死んだら悲しい?後悔?)は、この漫画を一部しか表してない。
タイトルからも父親との回顧録を想像するけれど、主には、父親の死後に芋づる式に出てくる問題に、弟と時間・お金・気持ちを費やしながら対処して、ストレスに負けながら、何とか終わって、の経緯が書いてある。

同じ著者の「蜃気楼家族」が度肝を抜かれるインパクトがあった分、今回はマシに感じた。充分、自分には起きてほしくないレベルの話だけど、「蜃気楼家族」はフィクションか?と思える内容だったから。

他人事として、物語的に読むと社会勉強?になる。
人って変わるんだな(弟の蜃気楼家族からの変わりっぷり)、
親戚にたかって生きる、こんな無責任な人がいるんだ、など。

本「掃除婦のための手引き書」(著:ルシア・ベルリン)★★★☆☆

予想とのギャップ:★★★★☆
夢中になれる  :★★☆☆☆
発見あり    :★★☆☆☆
総合      :★★★☆☆ 

表紙の写真がきれいな人で心惹かれ、その割に?タイトルのダサさは何だろうと気になった本。
ちょっと知ると時代の隔たりを感じるのもそのはず、著者はとっくに亡くなっていて、20世紀後半の話だった。
”掃除婦”なんていう言葉、意味は分かるけど、無理やり日本語に訳した感が否めない、という違和感で出足からつまずく。
読むと1回目は「これ面白いのか?」、2回目に「ああじっくり読むとじわじわと面白そう」と分かった。

まず、これは短編集。私は長く続く話を読むのが好きなので、数~数十ページですべての設定がガラッと変わるのはあちこち飛びすぎと思う。短編なのに?さらっと読んでは面白さが分かりづらい。1語1語ちゃんと読んで、情景を思い浮かべれば味わい深い。

内容は、著者の実生活を基にしたようで、タイトルの”掃除婦”から想像できる”貧しいシングルマザー”はこの本・彼女のごく一部しか表していない。ちょっともったいない。子供、高校生、親、アルコール中毒者、姉…さまざまな時代・立場の筆者が、アラスカ、チリ、テキサス、ニューヨーク、メキシコ…時々に生きた場所での出来事を描写する。
よく覚えてるもんだなと感心するくらい細かな具体的な記載で、立ち止まってよく読むとありありとその光景を想像できる。

そして客観的。見方によっては悲惨な境遇に見舞われてきたのに、つらいとか、大変とか、がんばったとか、読者に訴えない。これがいい・悪いの評価が入らない。他人の人生を語っているよう。

本そのものより著者本人に興味がわいた。

本「君と会えたから‥‥」(著:喜多川泰)★★★★☆

予想とのギャップ:★★☆☆☆
夢中になれる  :★★★★☆
発見あり    :★★★★☆
総合      :★★★★☆

君と会えたから……

君と会えたから……

 

 Kindle Unlimitedの対象になっていたので、無料で読めてしまった。
この著者の本はまだ2冊しか読んでいないけれど、今回も鳥肌が立つような強いメッセージを感じた。

まず、元気になる。

本に出てくる「ライフリスト(行ってみたいところ、やってみたいこと、達成したいことをどんどん書く)」を書いてみたら、地味な内容がほとんど。
自動的に一定の枠に収まるように、知らず知らずのうちに制御してしまっている。
それではつまらないから、「実際にできるかどうかは置いておいて」書くと、「海外だけでなく宇宙にも旅行に行きたいんだった」とか出てきて、わくわくする。
楽しい。
本の主人公のように17歳高校生じゃないけど、まだまだ平均寿命的には何十年もあるし、やりたいことやったらいい、気持ちになる。

そして、ああまずは「人に与えよ」だったと思い出す。

「自分が幸せじゃないと、他人を幸せにはできない」考え方が自己啓発書に出てくるし、それはもっともだと思う。
自分を犠牲にする必要はない。
我慢して嫌々ではなく、たぶん自然にやればできる「自分が人にしてあげられること」を毎日積み重ねていくと、合わせ鏡のように「自分が達成したいこと」の実現につながるんだったな、と。
同じ著者の「運転者」と通じる考え方なんじゃないかと。
人のために何ができるか、社会に役立つことは…の発想は、高校生の時に全くもってなかった。あるいはあっても、表面的だった。
今、違和感なく「こんな便利な社会で快適に生活させてもらってる」から「何か私ができることはあるのか」と考えられるのはうれしい。

最後に、人生は有限だと思い出す。

わかってる当たり前の話。みんないつ死ぬかわからない。
あと何日生きていられるのか?
だから好きにしたらいいんだった!と前向きな気持ちに。

本「アーモンド」(著:ソン・ウォンビョン)★★☆☆☆

予想とのギャップ:★★☆☆☆
夢中になれる  :★★☆☆☆
発見あり    :★★★☆☆
総合      :★★☆☆☆

 

アーモンド

アーモンド

 

表紙の絵が好きじゃないので、これまで読む気が起きなかった本。
2020年本屋大賞翻訳小説部門1位ということで、読んでみることに。
軽くあっという間に読めてしまった。

私の感想は、「感情が分からない人がいるんだ」と1つ学んだ、こと。
あと、教科書的・一般的には「下記のような観点で考えさせられる」小説ということなんだろうな、と推測してる。面白くなくはないけど、教訓めいてる。

①生まれつき「感情」が分からない人がいる、と知る。感情のありがたみに気づく。
…プレゼントをもらってうれしい、友達と遊んで楽しい、引っ越して寂しいといった、普段その存在を当たり前に感じてる様々な”感情”。”感情”がないなんて考えたこともないし、良くも悪くもどうしても”何か”を思ってしまう感情。
主人公はその感情が感じられない、”感情”を知らないから、それがないことを残念がるわけでもない。
”感情”の存在を意識したことがなかったけれど、そのおかげで豊かな気持ち・毎日を送れるのかもしれない。

②親や近所の人の愛情深さに感動し、自分だったらどう行動できるか振り返る
…笑わない、喜ばない主人公。学校などで気味が悪いと思われてしまうけれど、その子自身を理解しようとして、正面から向き合う親、近所の人たち。愛情が深い、素晴らしいですねといったところ。

③共感が困難なことを自覚しつつも、友達との関係を深めようと努力する成長の軌跡
…主人公は親に教えられて、周りの人が自然に感じる喜怒哀楽といった感情を自分が分からないことを理解している。他人への興味もほぼなかった。
成長するにつれ友達と呼べる存在が出てくると、相手に興味が出てきて、何かしてあげたいと自分から行動するようになる。成長の軌跡によかったねと。